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破間川ダムと流氷のような現象(いわゆる「雪流れ」)

2021年3月22日

ダム

破間川ダム湖では、3月中旬頃から4月上旬頃に流氷のような現象が見られます。

今回は破間川ダムと流氷のような現象(いわゆる「雪流れ」)について紹介したいと思います。

破間川ダム

破間川ダムについて

破間川は信濃川水系魚野川の支川で、守門岳の近くの烏帽子山から発しています。途中で末沢川や黒又川、西川、松川、和田川、羽根川などをあわせ、魚野川に合流しています。

破間川では昭和36年、39年、53年、56年、平成16年、23年に大きな被害を出した洪水が発生しています。特に昭和39年7月の集中豪雨による洪水では、破間川沿川や西川沿川を中心に浸水面積167ha、浸水家屋198戸の被害がありました。

これらの洪水被害などを鑑み、護岸整備や河道掘削などの河川改修工事を行うとともに、ダムによる洪水調節をすることになり、破間川水系に破間川ダムと広神ダムが建設されることになりました。破間川ダムは昭和45年に予備調査が着手され、昭和53年に本体着工、昭和61年に完成しています。広神ダムも平成23年に完成し、2基のダムによる洪水調節が行われています。

右岸側からの破間川ダム

破間川ダムの上流側

破間川ダムの直下には、ダム湖の水を利用して発電をする電源開発株式会社の破間川発電所があります。ダム湖の水は発電所で使われた後に放流され、下流の平石川取水堰堤で取水され、水路トンネルを通って末沢発電所へ送られます。末沢発電所を通った水は、今度は黒又川第一ダムのダム湖へも送られます。

ダムの下の四角い建物が破間川発電所

平石川取水堰堤

末沢発電所

破間川ダムは洪水調節や水力発電の他にも、川の水が常に一定量流れるようにする「流水の正常な機能の維持」という役割もあります。

 

破間川ダムの流氷のような現象(いわゆる「雪流れ」)

破間川ダム湖では、3月中旬頃から4月上旬頃に流氷のような現象を見ることができます。これは、冬の間にダム湖の湖面と湖岸に降り積もった大量の雪がブロック状に割れ、無数の雪の塊として水面に浮かぶもので、近年はカメラマンなどの撮影対象ともなっています。

破間川ダム湖の流氷のような景色

破間川ダム湖で流氷のような現象が起こる仕組みとしては、冬はダム湖への川の水の流入量が少なくなります。下流へは一定の放流をしますので、ダム湖の水位が下がります。そして、水面には冬の間に雪が厚く堆積し、水位が下がったダム湖の岸辺にも雪が堆積します。

2月の破間川ダム湖。厚く雪が堆積しています。

3月頃から気温が上昇すると雪解け水がダム湖に流れ込みます。ダム湖の水が増えると岸辺に堆積した雪が水没し、水中で割れて雪の塊が水面に浮かびます。水面に堆積していた雪も水位の上昇により割れて雪の塊になり、流氷のような風景になります。これらはダム湖の上流側から発生します。

このような現象が起こる条件としては、

1 春先まで(減水時)湖面と湖岸に大量の積雪があること

2 ダム湖の大幅な水位上昇(満水)を伴うこと

3 ダム湖への流入水(上流部の雪融け水)と湖面上層の水温が極めて低く、湖面の雪塊が数週間融け切らずに浮かび続けること

等が指摘されています。

 

新潟県立浅草山麓エコ・ミュージアム

破間川ダム湖で観察される「湖面雪割れ現象(雪流れ)」について(追記)

 http://www.eco-museum.jp/2019/03/3442.html

 

この風景が見られる重要な点は、川がダムで堰き止められていることです。ダムで水が堰き止められているので、雪の塊は下流には流れません。ダム湖の水位はどんどん上がっていくので、雪の塊が浮かぶ風景となります。ですので、ダム湖特有の現象といえると思います。

ダムによって水や雪がせき止められています

この現象は広神ダムや鏡ヶ池では見られませんので、標高がある程度高く、雪が一定程度降るなどの要因もあるものと思われます。

もしかしたら他のダム湖でもある現象なのかもしれませんが、こういった現象が起こる場所でしたら、多くの場合、ダムに行く道路は冬季通行止めになるような場所だと思います。

破間川ダムの場合は浅草山荘などがあるので冬でも道路が除雪されており通年で通れます。そのため、流氷のようなダム湖の景色が見られるのだと思います。

 

「雪流れ」という呼称について

近年は破間川ダム湖の流氷のような景色のことを「雪流れ」という言葉で呼んでいます。「雪流れ」という言葉から、川の上流から雪の塊が流れてくると思われたりするようですが、上に述べたように上流から雪の塊が流れてくるわけではありません。数年前までは「雪流れ」という言葉はなかったようです。付近の集落の方たちも「雪流れ」という言葉は使っていなかったようです。

浅草大橋より上流側を望む

破間川ダム湖の流氷のような景色を珍しい風景として評価したのは、数年前に大白川を担当していた地域おこし協力隊の方です。ダム湖に雪の塊が浮かぶ現象自体は破間川ダムが完成した時から発生しているはずですが、地域おこし協力隊の方が評価するまでは誰も気にする人はおらず、そのため現象の名前も特になかったようです。

ダム湖に浮かぶ大きな雪の塊

アザラシが似合いそうな風景

岸辺に近いところは、岸辺に積もった雪が塊となって浮かびます

地域おこし協力隊の方は誰も気にしていなかった流氷のような風景を珍しいと思い、大白川のいいところとして広めようとしました。その結果として、少しずつ話を聞いた人が出てきて、山の中で見られる流氷のような景色としてアピールされるようになりました。その中で、「雪流れ」という言葉が観光アピールとして作られたようです。ですので、現象自体は破間川ダムが完成した時から発生していると思いますが、アピールされるようになったのは最近のことですし、「雪流れ」という言葉が作られたのも最近のことのようです。最初に注目した方のことを忘れてはいけないと思います。

木には若葉がつき始めていますが、ダム湖には雪の塊が浮かんでいます

4月中旬頃になると雪はすべてとけてしまいます

破間川ダムの融雪放流

破間川ダム湖の流氷のような景色は4月上旬頃を過ぎると雪は全てとけて見られなくなります。その後もダム湖の水位はだんだん上がり、4月下旬頃から5月頃になると雪解け水でダム湖がいっぱいになり融雪放流が始まります。

破間川ダムの上にある非常用洪水吐の穴から真っ白な水が流れ落ちていき、天気が良いととても爽快で涼しげな景色となります。

破間川ダムの融雪放流

刻々と表情を変える水紋

雪解け水の流入でダム湖はいっぱいに

破間川ダムの上から見下ろす

このように、破間川ダムでは3月から5月にかけて、流氷のような現象や融雪放流を見ることができます。

流氷のような現象は自然現象ですので、積雪状況などにより見られない年や、時期がずれる年もありますのでご注意ください。流氷のような景色の日々の状況については魚沼市観光協会のサイトで紹介をしていますので、そちらもぜひご覧ください。

 

(一社)魚沼市観光協会 https://www.iine-uonuma.jp/2021/03/20702

 

この記事を書いたのは...

ダムの知識ガイド:目黒公司
一般財団法人日本ダム協会が任命するダムマイスター(一般)。
これまでダムについての講演などを開催。新潟県魚沼地域振興局の『うおぬまダム周遊MAP』制作監修。過去に開催されたダムの見学ツアーではバス車内ガイド等を担当。

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