雪国観光圏とダム② 利根川源流ダムガイドの会
雪国観光圏を構成する群馬県みなかみ町は、利根川の最上流部のダムが多くある町です。今回はみなかみ町で活動しているボランティア団体「利根川源流ダムガイドの会」を紹介したいと思います。
「利根川源流ダムガイドの会」の設立まで
群馬県みなかみ町は、利根川の最上流部に位置する町で利根川の上流部に建設されたダムがいくつもあります。今回、みなかみ町のダムや「利根川源流ダムガイドの会」について、お話を伺ったのは雲越里加会長です。

奈良俣ダムと雲越会長
雲越さんがダムに興味を持ったのは2012年頃のことでした。以前から建造物に興味を持っていた雲越さんは、SNSでダムが好きな人と交流を持つようになったことからダムにも興味を持ち、ダムの写真展や奈良俣ダムの点検放流を親子で見に行くようになりました。
その頃に自治体や住民、ダム管理者などで構成する「利根川源流水源地域ビジョン」でダムのガイドを育成したいという意向があり、そのための矢木沢ダムの見学会などにも参加するようになりました。
2014年には矢木沢ダムと奈良俣ダムの点検放流でぐんまちゃんのアテンドをするなどスタッフとして参加をしたり、点検放流の後にホテルの支配人や役場の人などに来てもらい、地元の人にも声をかけて有名なダムマニアの宮島さんとダムを盛り上げる話し合いをしたりしました。そして、翌年の点検放流の時にはぐんまちゃんのアテンドの他にもダムグッズの販売をしました。
2016年には矢木沢ダムと奈良俣ダムの点検放流の数か月前に宮島さんの講演会があり、講演会をきっかけに町や水資源機構、商工会の人たちが団結し、点検放流の見学にバスのピストン輸送をするといった取組が始まりました。
2016年10月には矢木沢ダム、奈良俣ダム、藤原ダムの三ダム見学会を一泊二日で行いました。参加者は二十人ほどで、雲越さんがメインでガイドをし、奈良俣ダムの建設に携わった人も説明をしました。夜は奈良俣ダムで星に詳しい人による星空見学もし、星空見学には地元の人などを含め五十人くらい来ました。
そして、2017年6月には「利根川源流ダムガイドの会」の設立に至ります。
利根川源流ダムガイドの会の活動
利根川源流ダムガイドの会のメンバーは5人います。会長は雲越さんで、その他に、奈良俣ダムの建設に携わった人や、民宿の主人、ホテルの従業員、みなかみ町藤原地区に移住して来た人がメンバーとなっています。
会の活動としては年に3回ほど、みなかみ町の体験旅行でダムガイドの依頼があります。また、矢木沢ダムの点検放流の時に出店をしたり、奈良俣ダムでの「利根川源流まつり」でダムコーナーを設けたりしています。その他にも、雪まつりの手伝いや武尊山の山開きにぐんまちゃんと参加、みなかみ町の町づくり協議会が作成する子供向け冊子の執筆協力、NHKの番組への出演などもしています。メンバーの中には星に詳しい人もいることから、8月と10月に昼間はダム見学、夜は奈良俣ダムで星空見学をするツアーをしたこともあります。

多くの人が集まる矢木沢ダムの点検放流
2017年の矢木沢ダムの点検放流の際には、利根川源流ダムガイドの会でダムカード風の写真撮影用の枠を作成しました。これは、水源地域ビジョンの会議で点検放流の時に目玉になるようなもの、写真スポットになるようなものがあるといい、という話題が出たことから、インスタグラム風の枠が流行していた時だったので、ここで撮るといいという枠を作成することにしたものです。手持ちと据え置きの二種類を作成したら好評で、全国各地のダムで真似をしてダムカード風の枠が作られるようにもなりました。

ダムカード風の写真枠

手持ちのもの
みなかみ町を代表する三ダムについて
みなかみ町には全部で7基のダムがあります。特に利根川の最上流の藤原地区には5基のダムがあります。雲越会長にみなかみ町の代表的なダムについて伺いました。
藤原ダムは、利根川の重鎮。見た目は華やかさがないかもしれないが、利根川本流の要の役割を担っています。下流ではホロージェットバルブから放流をしており迫力が体感できます。ダムカードが出てくる機会を自作するなどダムの管理者がいろいろ工夫しています。
ダムカードの自動発券機
写真ポイントを整備
放流中の藤原ダム
矢木沢ダムについては、それ以上行く場所がない、関東のラスボス的なダムという印象があります。圧倒的な大きさの湖を抱えながらもしなやかにカーブするアーチ型が美しく、洪水吐が独特な点も良いところです。点検放流ではすごいことが起こり、普段の姿からは想像できないようなギャップがあります。みんなで水を浴びて喜んでいるのを見ると、人を引き付けるものがあると思います。

矢木沢ダム
利根川の最上流
奈良俣ダムは、道路を走っていると見える圧倒的な存在感に感動します。点検放流の時も水紋がさらさらで、模様の美しさが見事です。特に点検放流のゲートが閉まる時の水紋がとてもきれいで気に入っています。遊歩道を歩くと、石がきれいに敷いてあるのが見られます。遊歩道を歩くとダムの大きさを間近で実感できます。
奈良俣ダムの点検放流

岩石などでできている奈良俣ダム
最後に
最後にみなかみ町やダムに対する考えをお聞きしました。
ダムが好きなので、それぞれのダムに思い入れがあります。ダムを知っていくうちに、色々な分野、地域の結びつきなどを考えるようになりました。自分は商売しているわけではないので、何で地域に貢献ができるかと考えると、自分が好きなダムでした。それまではあまり地域の人とコミュニケーションの機会がなかったのですが、ダムを通じて近所の人とも交流ができるようになって、ありがたいことだと思います。自分が住んでいる地域なので、皆が生き生きとして、多くの人に来てもらいたいと思います。家族の協力がないとできないので、家族にも感謝しています。
今後、コロナ禍の中で、今までやってきたことをどのようにできるかが課題です。自分たちの会を大きくするとかではなく、みなかみ町に来た人が点検放流などに興味を持ってもらい、地域が活性化して元気になればいいと考えています。ダムに興味を持っている人は確実に増えてきているので、せっかくダムがたくさんある地域に住んでいるからには多くの人にダムやみなかみ町のことを知ってもらいたいと思います。
雲越会長にはいつもお世話になっていますが、今回改めてみなかみ町のダムを案内していただいたり、地域活性化などの色々な考えを伺ったりしたことで、ダムとの付き合い方を新しく意識することができました。
皆さんも雪国観光圏のダムを訪れてダムと地域との関りについて考えてみませんか。
この記事を書いたのは...

- ダムの知識ガイド:目黒公司
- 一般財団法人日本ダム協会が任命するダムマイスター(一般)。
これまでダムについての講演などを開催。新潟県魚沼地域振興局の『うおぬまダム周遊MAP』制作監修。過去に開催されたダムの見学ツアーではバス車内ガイド等を担当。